国重要文化財「鷹見泉石関係資料」 公開・活用のための保存修理事業(令和6年度)が完了しました
保存修理事業とは
古河歴史博物館では、古河市に寄贈されて国の重要文化財に指定されている「鷹見泉石関係資料」(3,151点)という貴重な歴史資料を陳列公開・保存収蔵しています。
その特徴は、多様な形態の文化財-望遠鏡・寒暖計・測量器具類や絵図地図類、書画や記録画を収める図巻や掛幅など-さまざまな形態の品々によって構成されていること、そして、それらの文化財が散逸することなく原装に近い状態で伝来したということにほかなりません。
その一方、手つかずのまま経年劣化した状態のものも多く見受けられます。
とりわけ絵図・地図類は、複数の和紙を貼り継いで料紙が成立しているために、小麦粉澱粉糊など自然由来の成分からなる糊の効力が尽きて、料紙を構成する紙の分離によって、本来一枚の図であるものが複数のピースを有するパズルのごとく取り扱い困難な状態におかれています。
そこで、古河市では、文化庁の「国宝重要文化財等保存・活用事業費補助金」の交付を受けて、令和6年度の美術工芸品保存修理事業として「鷹見泉石関係資料」10件の修理を行いました。
令和6年度(2024年度) 保存修理事業対象の文化財 全10件
「伊勢松坂城下図」 | 紙本著色 | 1舗 | 地図・絵図類258 |
「相模国小田原城下図」 | 紙本淡彩 | 1舗 | 地図・絵図類282 |
「宇都宮城岩槻城御泊御取建并部屋割図」 | 紙本著色 | 2舗 | 地図・絵図類468 |
「日光山御宮絵図」 | 紙本墨画 | 1舗 | 地図・絵図類643 |
「西宮絵図」 | 紙本著色 | 1舗 | 地図・絵図類362 |
「播州明石図」 | 紙本著色 | 1舗 | 地図・絵図類365 |
「尾張美濃国郡図」 | 紙本著色 | 1舗 | 地図・絵図類267 |
「遠江国掛川城市図」 | 紙本彩色 | 1舗 | 地図・絵図類296 |
「駿河国輿地全図」 | 紙本著色 | 1舗 | 地図・絵図類287 |
「久能山惣絵図」 | 紙本著色 | 1舗 | 地図・絵図類615 |
修理前後の様子
【修理前】伊勢松坂城下図
【修理後】伊勢松坂城下図
【修理前】相模国小田原城下図
【修理後】相模国小田原城下図
【修理前】西宮絵図
【修理後】 西宮絵図
【修理前】尾張美濃国郡図
【修理後】尾張美濃国郡図
修理事業者 半田九清堂(選定保存技術保存団体「国宝修理装潢師連盟」加盟工房)
わが国固有の文化財は、それ自体が劣化を助長しない自然由来の素材によって構成されている場合が多く、そのために幾千年の時間を越えてなお文化遺産として伝えられてきたといってよいものです。
たとえば、可逆性の高い糊を用いることは、その効力が永久に持続しないこと、すなわち経年劣化により接着力が失われていくことを意味します。保存環境や性質により異なりますが、絵図地図では、概ね50年~150年程度経るとその継ぎ手が離れていくために修理を要するものが多いとされています。
修理はやむを得ぬ場合を除いて、原品に新たな素材を加えずにすすめることが原則とされます。文化財の保存修理は、伝統と最新技術によって構成される高い技術力に裏付けられた方法で進められます。
この「鷹見泉石関係資料」美術工芸品保存修理事業は、国宝・重要文化財を正しく安全に修理するため、文化財保護法の規定により選定される「選定保存技術保存団体」加盟工房の半田九清堂で行われました。
歴史資料としての学術的な価値と文化財の持つ風合を損なわぬよう、保存修理事業の開始から終了まで、同工房において文化庁担当官・同工房技術者・古河歴史博物館学芸員など関係者間による幾たびもの検討会議を重ねて修理がすすめられました。
過去の修理文化財(2007-2024年度)
重要文化財「鷹見泉石関係資料」は2007年度から継続して、少しずつ修理を行っています。
過去の修理文化財一覧は下記よりご覧ください。
2007-2024年度修理文化財_鷹見泉石関係資料(PDFファイル:272.7KB)
補助事業について
令和6年度 重文・鷹見泉石関係資料の美術工芸品保存修理事業は、令和6年4月1日付けで交付決定を受けた文化庁の「国宝重要文化財等保存・活用事業費補助金」による「美術工芸品保存修理」事業である。
◇事業主 古河市
◇事業費 5,580,700円
◇文化庁による国宝重要文化財等保存・活用事業費補助金 2,796,000円(補助率50%)

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古河市 古河歴史博物館
所在地:〒306-0033 茨城県古河市中央町3丁目10番56号
電話番号:0280-22-5211
ファックス:0280-22-5215
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更新日:2025年03月27日